読みやすい歴史エッセイ
この本の観点は面白いと思う。剣豪を社会の中で位置づけていくという、ある意味では当然な観点は、今まで多くの本では欠けていたからである。ただ、全史という題名から、きちんとした歴史書を想像するが、むしろ読みやすいエッセイと考えた方が良いだろう。資料をちゃんと読んで書いているときもあるし、著者の感想がそのまま書かれていることもある。文章はくだけていて、読みやすいが、軽いとも言える。
非常に多くの剣豪が登場するが、それぞれについて、簡単にしか言及していないので、剣豪についてある程度知っていないと、よくわからないかもしれない。しかしよく知っている人なら、著者の観点で剣豪達を見直すことは面白いだろう。
アプローチは面白いと思う
好きなもんで今まで色々剣豪の書物を古いのから新しいのから読んだんだけども、剣豪を年代順に並べる以上の事をした書はなかなかなく、歴史との繋がりを考えながら書いたものとなると、殆ど存在しない。だから横の繋がりが不鮮明で、今に至るまでずっと武蔵最強説とかが罷り通っているのだけども、それを歴史的社会的観点から、所詮はサラリーマン的就職という小さな処に落着くのだが、そういうアプローチ自体は面白いと思う。この本一冊というわけでなく、数ある剣豪本の一冊というのであれば、読んで時間の無駄という事はなかろう。 但し、サラリーマンではない当方にはよくわからん、というより共感出来ぬ話も多く、サラリーマン讃歌糞食らえ、ビジネスマン武士道糞食らえな当方には、なんだかなぁと思わせる記述が多々あった。
組織された剣豪をサラリーマンと比較するなかれ
題名が示すとおり、剣豪の発生から末裔に至るまでの歴史。孤高の剣豪としてでなく、その時代の組織ととう関わり合ったかをベースにしようとしている。ただ、著者のいう「組織」を定義していないので、少しばかりの混乱を生じる。ご本人のサラリーマンをやめた心情が縷々語られてもいるが、これは剣豪史には無用なものであろう(p40)。 吉岡一門の剣術から染め物業への変身は、不況を脱する途を模索する現代企業に通じるとうのは、筆の走りすぎに感じた。事実はどうであったか吉岡を検証しなけらば何ともいえないことである(p63)。現代企業を持ち込まなくとも良いだろうし、持ち込めばかえって混乱する。サラリーマンとお家大事の武家とを同列に置いているが、リストラばやりの現今では、そう考えるサラリーマンは少なくなっているだろう。むしろ、会社とは対立関係の場合が多いのではないだろうか? また、NHK大河ドラマ「利家とまつ」や「武蔵」を取り上げているが、史実考証の書としては、むしろフィクションとして受け入れられているそれらのドラマに言及するのは、信頼性を損なうものと思われた。剣豪の足跡を追いたいのに、無用な方面に目がいってしまうのには困った。妄言多謝。
光文社
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