主人公の視点で濃密に描かれるが・・
共和制ローマ末期、奴隷剣闘士スパルタカスによる反乱という史実を描く。
ストーリーは終始、ほぼスパルタカスの視点で描かれる。これにより主人公の濃密な心理描写、蜂起の決断や蜂起後のスパルタカスの焦燥感や孤独を際だたせる効果を上げている。一方で、ストーリーの視野が主人公のみとなることで、ストーリーの広がりが限定されるような印象を受けた。
また、重大な戦闘やエピソードを省略して事が終わった後で回想という形で描く手法を多用しているのが顕著。
こうしたストーリー展開上の特徴は、蜂起当初の仲間たちが死んだ中盤以降において特に目立つ。
反乱軍はイタリア半島を南北に縦断し、いくつもの討伐軍を打ち破るのだが、このような外部の状況に関する俯瞰的なまとまった描写はない。元恋人やパトロンとの再会、討伐のローマ軍との戦闘といった様々ななエピソードが、断片的できちんと終了しないまま、スパルタカスの心象風景を中心に進んでいくようになり、作品はきちんと描くことを辞めたように、急ぎ足になり、ふつりと結末を迎える。
読みやすいが・・・
文章が上手いのかスイスイ読み進んだが「盛り上がりはどこだろう」と思っている間に終わってしまった、という感じ。著者の小説はいつも重たいくらいに読み応えがあるので期待し過ぎてしまったのかもしれないが。
深いけど盛り上がりに欠ける
最初に断っておくと、私も皆さんと同様世界史をこよなく愛し、佐藤賢一の才能と作品を高く評価し、尊敬しています。 そして、同じ共和政ローマ時代を舞台とした『カエサルを撃て』が素晴らしかっただけに、本作品も非常に期待して手に取りました。 …ですが、残念ながら3点。作者の持味である、学識に基づいた活き活きとした当時の社会生活の描写や、個性的な登場人物、ダイナミックな展開、ユーモアたっぷりの文体は健在ですが、「ヤマ場がなかった」という寂しい印象を抱いてしまいました。 おそらくその理由は、魅力的なライバルに欠ける(ローマ軍が弱すぎる)点にあるでしょう。素材が有名なだけに、反乱軍が連戦連勝を重ねてしまうのは史実に沿ったものと思われますが、途中で緊張感がなくなってしまうのは否定できません。 ただ、「自由」の意味については考えさせられます。社会心理学者E.フロムが説いた「自由からの逃走」(自由「への」逃走ではない)ってこういうことかも、と思った今日のこの頃。てへっ!
これぞ佐藤賢一
歴史上の出来事を、熱く描き出す佐藤賢一らしい一冊。 スピーディな展開に一気に読み切ることができました。 中盤から終盤にかけてが駆け足すぎるようにも感じられましたが、最後のワンシーンに、ああ、なるほど、と。 『カエサルを撃て』と、あわせて読むと良い感じです。 相変わらず女性キャラクターたちが魅力的でない(私の主観ですみません)のですが、登場人物たち皆の人間臭さが、物語に彩りを添えていて、遠い昔の物語を、ずっと身近な息吹をもって、描き出しているのは、佐藤賢一らしいと思いました。
中央公論新社
黒い悪魔 褐色の文豪 ダルタニャンの生涯―史実の『三銃士』 (岩波新書) 女信長 英仏百年戦争 (集英社新書)
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